組織の前半戦について ”養”⇒”墓”

今回も、組織の前半戦について見ていきたい。人生と同じように、組織も100年設計とすれば、目標設定や発達段階への対処が可能となるのだ。今までは、組織を100年設計しようという発想すらなかった。生命体として捉えようという発想すらなかった。だから、いかにお金を稼ぎ、効率を重視し、力技にて組織をマネジメントするという方法が採られた。しかし、令和の時代は、人生も100年設計するために人生の目標設定を今一度、皆がやり直しを迫られているのと同様、組織もまた、100年設計するために組織の存在目的やマネジメントを今一度、すべての組織がやり直しを迫られているのだ。

 

組織は0~19年目までは社長のキャラクタが強く組織に影響するのであるから、社長のキャラクタを全面的に出していけば良いということになる。今回も、具体例として、ラクスル(株)の事例を引き続き見ていきたい。

 

下図が松本氏の生涯エネルギー遷移図だった。

○松本 恭攝 氏 1984年10月10日生

・個性:”墓”

・本質グループ:火(陰)

・生涯レール:土(陽)

・老年レール:金(陰)

 

松本 恭攝 氏の生涯リズムを見る限り、

発達課題第1段→ クリア

発達課題第2段→ クリア

発達課題第3段→ クリア

発達課題第4段→ △クリア?

発達課題第5段→ ×

発達課題第6段→ ×

発達課題第7段→ ×

発達課題第8段→ クリア

というのが見える。

 

このような場合のカルマは第4段、第5段になる。特に、”自我確立”という第5段のカルマが重くのしかかる。生涯かけて、この”自我確立”と向き合っていくのであろう。その前に、”劣等感”という第4段のカルマもやや重くのしかかるのだろう。それゆえ、どんなに働いても、会社が大きくなっても、まだ足りない、まだ負けているという感覚に襲われ、いったい自分の会社は何処に向かい、どんな存在なんだろう?という自問自答を繰り返すことになるかもしれない。

 

青年期(13~19才)のキャラクタは”墓”だが、”養”というキャラクタから”墓”というキャラクタは、緊張と試練の関係ゆえに、やや乗るのに苦労したかもしれない。もしかしたら、まだ十分に乗り切れず、大人になっているのかもしれない。この”墓”という自我を確立できれば、人生の前半戦はクリアできるのであろうが、ここが松本氏の場合、多少困難なのだ。

 

2009年に創業し、最初の6年間は、”絶”というキャラクタで経営していくと良い時期なのだが、2015年までは、印刷会社の非稼働時間を活用した印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム事業を展開する。その後、2015年~2021年までは”養”というキャラクタで経営していくと良い時期だが、2015年12月からは物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」、2020年4月から広告のプラットフォーム「ノバセル」事業も開始している。

 

ちょうど2015年というのが組織形態を転換するのにちょうど良い時期であり、衝動型から順応型へと組織形態を変えていくと良かったのだが、ラクスル株式会社はまさにそうだった。独自のカルチャーを作っていくためにも、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを要素分解して、ラクスルスタイルと呼んでいる行動規範を次の3つに絞った。以下、こちらより抜粋

実はこの行動規範は、そのまま人事評価の軸になっている。行動規範自体がコンピテンシーになっていて、社員のグレード別に要件が決まっている。逆にいうと、いくら結果を出しても行動規範に則っていなければ、会社としては評価しない、ということでもある。

 

ラクスルスタイル」は「Reality」「System」「Cooperation」。非常にシンプルなものだ。「Reality」は解像度を上げて、もっとリアルを深くミクロに見ていこうということ。「System」は仕組み。まずは手でやったものを仕組み化して、誰でもできるようにして、それをソフトウェアに落とし込んでいこうということ。「Cooperation」は連携。ラクスル(株)は非常にバリューチェーンの長いビジネスをしている。マーケターの横でエンジニアが仕事をしていて、60歳の元印刷機メーカーの社長や、元トラックのドライバーもいる。この多様なメンバーがしっかりと連携しないと、最終的なユーザーエクスペリエンスに繋げられない。この3つを体現することが、ビジョンの実現に繋がる、という接続を行ったのである。地道にコツコツとシンプルに、人脈を構築するというスタイルは、まさに”養”のキャラクタとマッチした、とても良い行動規範であったと思う。

 

ビジョン・ミッション・バリューと会社のビジネスモデル、もっと言えば創業者の人格も全て繋がった一つのものになったという。そこが繋がっていなかった時期は、何かを無理しているということなのかな、と振り返れば思うという。

 

 

・人事制度の構築

ラクスル(株)は2015年の半ばまで明確な人事制度が無かったと。一応形としてはあったのだが、パッチワークのようになっていた。ビジョン・ミッション・バリューとの連動みたいなところが弱かったからだ。ビジョン・ミッション・バリューをしっかりとルールとも紐づけていこうということで、評価制度を再構築した。

 

ビジョンを要素分解して、「それって組織とか人事の言葉で言うとどういうことなんだっけ」というのを1つずつ突き詰めて、その上で組織のポリシーをつくっていくということをやった。これにはかなり時間をかけたという。

 

ここで大事なことは、外部のアドバイザーやコンサルタントの方に案を出してもらってそこから決める、ということではなくて、経営陣がちゃんと考えないといけないし、ちゃんと時間を使って自分たちの中で落とし込んでいく必要がある。また、「内容と設計」だけではなくて「背景と運用」が大事である。日々の行動に紐づけていくミッションツリーの作成や、1on1を定期的に実施するといった、運用部分を重視していくことだ。

 

ミッションツリーというのは、全員の半期に1回設定した成果目標の内容が公開されていて、経営陣からミドルマネージャー、現場に至るまで、どのように目標が連鎖しているのかが、わかるようになっているものだ。どんな役割分担になっていて、どのように自分の仕事と会社のビジョンが繋がっているかがわかると、納得感を持ちやすいのであろう。手間はかかるが、納得感が高ければ高いほど、現場の行動がしっかり促進されるので、効果が高いということだ。こうして会社のモチベーションは向上していった。

 

 

・マネジメントについて

続いてマネジメント不全症であるが、この組織症例については、かなり多くの会社が悩まれていると思う。これはミドルマネジメント不在という話でもあるし、経営者そのものの課題でもあると思う。経営トップ依存症ともリンクしているとも思う。経営と執行というところで視野の違いが生まれる。これは世に数多あるスタートアップにとって一般的な課題だと思う。

 

ラクスル(株)の場合、具体的には、課長というよりももっと上、執行役員や部長メンバーを選抜して、徹底した育成投資を行った。勿論、社長の松本氏にも同席してもらった。毎月1回、1日がかりで実施した。1日8時間を11回やったという。

 

社長の松本氏もCFOの永見氏も、本当にコミットして取り組んだ。参加者本人に直接フィードバックもしたし、時に辛いことも言ったけれど、やっぱりこの研修を通じて成長したメンバーは多いという。現に取締役や執行役員になったメンバーもいるし、しっかりと時間を使って、フィードバックして、PDCAを回すというのはすごく大事だ。大きく分けると、ビジョンマネジメント・戦略マネジメント・PDCAマネジメント・メンバーマネジメントの4つである。1つのパートについて丸1日を2回以上実施したという。

 

当たり前だが、人によって得手不得手がある。強みを伸ばすことも大事だし、一方で致命的な弱みは解決しなければいけない。また、弱みを直すかは別として、弱みを知っておくというだけでも価値があって、経営というレイヤーになれば弱みは他の人の力によって補っていけるのだから。具体的にはフレームワークを学んだり、モチベーションクラウドを使って自部署のスコアを上げていくという実践も行った。マネジメント、経営において大切なことを学び、同じ言葉で語れるようになるということが、すごく大事なことだと感じたという。

 

このタイミングでは、先程の経営陣の連続・非連続と事業・組織・財務のローテーションだったり、新しい経営メンバーを採用することだったり、とにかく組織をつくるということに対して社長の松本氏もCFOの永見氏も意識高く取り組んできた3〜4年だったという。

 

この幹部育成でも、他の企業だと最初の数回は経営者が同席して、後は外部コンサルで実施ということも良くあるが、ラクスル(株)の場合は、社長の松本氏とCFOの永見氏の二人が、年間通じて11日間(11回)フルで出席した。それには、永見氏の過去の経験から、経営チームのレベルアップということにはかなり強いアテンションを持って臨んだ方が良いという思いが背景にあると。

 

 

・順応型から達成型への転換

ここまでは、企業の成長ステージという観点でいうと拡大モードにおいて起こることだ。ラクスル(株)だけでなく、他の成長企業のほとんどがこの症例に陥っていく。ラクスル(株)は、2021年以降、拡大モードから多角モードへと移りつつあって、第4段:順応型組織から第5段:達成型組織への転換時期であり、今まさに取り組まれている課題はというと、マネジメント画一症だという。

 

これまで経営チームのメンバーが比較的ビジネス寄りの人材が多かったので、カスタマーサポートやエンジニアという組織に対する対応が、どうしても弱かったという事実は否めない。全ての組織を画一的に見てしまっていたという反省があり、そこに対しての取り組みを社長の松本氏が進めていく。

 

エンジニアのマネジメントは、やはりビジネスサイドのマネジメントとちょっと違っていると思う。経営メンバーはビジネスサイドについては、ある程度想像力が働くのだが、エンジニアについては自分自身がプレイヤーとして経験したことがないから、分からないことも多い。そんな中、マネジメントの「型」をつくっていこうという取り組みをしたという。

 

CTOの泉氏が来たことで、スクラム開発」という型を導入した。開発のスケジュールを切って、週次で見直していく。またレビューをする、テストをするという習慣を徹底し、コーディングの仕方も型化していった。また、直近だとペアプロという形で、2人が同じコードを見て書いていくというやり方を導入した。1人が書いて、もう1人がチェックをする。実は、どの施策も導入する際には、エンジニアチームの非常に強い反発があったという。

 

しかし、これがエンジニアチームのコーディングの仕方であり、マネジメントのやり方だ!ということを伝え続け、やり続けることで、エンジニアの組織に一体感が出てきた。昔は少人数で各自がバラバラにコーディングをしていたが、今はチーム開発という体制へと進化してきた。

 

カスタマーサポートについても、ラクスル(株)は課題を抱えていた。全社で200人近い社員がいるが、その内の半分以上がカスタマーサポートである。カスタマーサポートにはカスタマーサポートという組織のカルチャーが存在していて、ビジョンへの共感がとても高かったりする。ただ、実際に働く人の志向や、取り組む業務というのは、他の部署とはやはり異なる。その中で同じ人事制度やルールで運用していくのは難しいと感じていた。しっかりとカスタマーサポートという組織と向き合って、カスタマーサポートの組織人事を考えていくというプロジェクトを進めた。

 

「従業員の経験」というものを中心に起き、「採用方針の明確化」「モチベーション向上のプログラム設計」「リーダーシップチームの構築」「役職・評価・報酬の再設計」などカスタマーサポートオリジナルの施策を実施していくことで、課題をクリアしていったという。

 

ビジネスサイド中心だったところから、エンジニアやカスタマーサポートを中心に置いて、そこに合ったマネジメントの型を導入することで、このマネジメント画一症を解消していかれたという。とても素晴らしい。外部コンサルによる部門ごとの組織偏差値が出るが、それを年を追って改善している。本当にカスタマーサポートについては、経営チームの誰がマネジメントしても失敗するという状態であった。苦しみながら努力をしてきて、何とか改善していくことができたという。

 

組織づくりにおいて最も重要だったことは「経営メンバーが誰よりも成長すること」である。新しい思考のフレームワークを取り入れて、自社が活用できるよう調整して血肉化することかもしれないし、視野・視点を変えていくということかもしれない。経営メンバーの成長なしに、会社の成長はないと思う。敢えて社長ではなく「経営メンバー」としているのは、社長だけだとダメだと思っているからだ。経営メンバーが社長と一緒に成長していくことが重要だと思うという。

 

社長が全ての課題を解決しようとすると、会社は社長1人だけの器の大きさで留まるかもしれない。取締役が成長して、リーダーシップチームが大きくなっていくと、会社の器というのはリーダーシップの器になっていくのだから。人が育つ唯一の方法は、経験だ。経験を社長だけのものにせずに、リーダーシップチームで経験できれば、どんどん会社全体にもシェアしていける。経営チームの成長が、組織の成長において最も重要なことだと思っていると。

 

 

・経営方針の転換

2021年以降は、ラクスル(株)は順応型から達成型組織へと多角化路線へ進み出している。組織も大きくなり、チームから部や事業部という方向へと転換していくのであろう。社長の松本氏のキャラクタも、”養”⇒”墓”へと転換する時期でもある。

 

この”墓”という自我を確立できれば、人生の前半戦はクリアできるのであろうが、ここが松本氏の場合、多少困難な様子。何せ、児童期は”養”というキャラクタであり、初対面の相手には強い警戒心を示すところがあり、典型的な「人見知り」タイプだ。穏やかに見えるが、人の好き嫌いも激しく、理不尽なことは見逃せない強い正義感を持っているので、友好関係が偏る傾向がある。一方、青年期の”墓”は、周囲に溶け込むのがうまく、雑学的な知識や豊富なユーモアでどんな相手とも楽しい会話が出来る人である。互助の精神を大切にしているので、和を乱すような人や行為を許さず、他人にも自分と同じような協調性を要求する。世間の目や周囲の空気に敏感で、人から批判されるようなことはしない。それゆえ、やや異なる接し方になるため、多少の乗りにくさはあるだろう。

 

この自我確立がとても難しい。ラクスル(株)のビジネスモデルは、「仕組みを変えれば世界はもっと良くなる」であるから、既存のビジネスモデルを効率化するというモデルだ。自社開発製品や自社独自サービスというものを創り出しにくいモデルだ。どうやって自我確立していくのか、ここがとても難しいのであり、今後も悩み続けることになるのかもしれない。

 

ポイントは、”墓”というキャラクタに乗るということなのだ。互助の精神を大切にし、和を乱す人を絶対に許さず、他人にも協調性を強要するくらいの経営方針で良い。何せ、ラクスル(株)の独自のサービスを見いださない限り、いつかは効率化も限界が来る。ラクスル(株)でないとダメ!と言わせる何か独自のものがない限り、ビジネスモデルは長くは続かない。そのポイントとなるのが、互助の精神ということだ。どうやって自我を確立していくのか、今後のラクスル(株)に注目したい。

 

例えば、「ハコベル」というブランドは、物流の効率化を目指したビジネスモデルだが、何か物流の新たな自動車を開発するなどもちろん難しいし、ドローン物流はアマゾンですら撤退方向であるし、ラクスルでないとダメだ!という独自のサービスを極めて見いだしにくい。「ラクスル」というブランドも同じだ。印刷業界のノウハウがあるわけでも無く、独自の印刷技術を提供するわけでもないし、何かラクスルでないとダメだ!というものを見いだしにくい。では、楽天やYahooのようにポータルサイトを目指すのか?というと、それにはあまりにも時間がかかりすぎるし、それこそ、独自のサービスを見いださない限り、楽天やYahooに対抗はできないだろう。

 

そう考えると、新たな分野のブランドを考えていくしか無いのであろう。そう、多角化路線だ。「ノバセル」は広告分野の効率化を目指したビジネスモデルだ。しかし、広告のノウハウが無いのに独自の広告を開発するなどとても難しい。FacebookGoogleという競合にIT広告の分野で勝てるとは思えない。あくまで、仕組みの効率化によるビジネスモデルが限度であろう。では、会計の分野はどうか?それも、先駆者であるfreeeがシェアを伸ばしている。ただ、freeeも独自のノウハウをそこに散りばめているわけではなく、あくまでクラウドにて仕訳ができるというサービスにすぎない。独自に開発するというのは極めて難しいのだ。

 

他に効率化によるビジネスモデルが生きる分野は無いのだろうか?当方はあると思っている。それは、”人”に関する分野だ。特に採用の分野は、まだまだ効率化できる。先駆者も多いが、HRテクノロジーしかり、AIによるマッチングシステムが徐々に台頭してきているが、まだまだそのシステムが市場を席巻しているとは言いがたい。なぜか?それは、独自のノウハウをシステムに散りばめることが極めて難しいから。何が難しいのか?それは、”人”についてあまりにも無知だからだ。”人”を語る上で、魂のことも知らないで語れないし、波動レベルも知らないでマッチングなど出来ないし、発達課題も特定できないのにモチベーションを上げるなどできるはずがない。単に今までの経験とスキルを見て、業務内容に合うか合わないかをAIでマッチングさせる!などと安易に考えている人が多すぎるのだ。そんなに”人”は単純では無い。もっと複雑なのだ。もっと”魂”が主導権を握っているのだ。

 

このようなことを十分に理解して、独自のノウハウとしてシステムに散りばめることで、人材のマッチングシステムは成立する。会社の波動レベルを知り、部署の人々の波動レベルや発達課題を知り、業務内容を知り、どのような役割を新たな人に期待するのか、それらをすべてシステムに登録できるような仕組みができるのならば、それはもう独自のノウハウと言えるのだろう。そういう人材マッチングシステムをラクスル(株)が開発したのであれば、それは”墓”というキャラクタの方向性にも合うし、互助の精神にも合うし、既存の業界を単に効率化しただけのビジネスモデルではなく、独自のノウハウが詰まったビジネスモデルと言える。このような”人”に関する分野のサービスを、「ツナゲル」などのブランド名で起案できれば、面白いと思う。



いかがであろうか。組織の前半戦である創業から19年目までの事例について見てきた。とてもわかりやすいラクスル(株)の事例は、多くのスタートアップに参考になるのではないだろうか。とにかく、ラクスル(株)の真似をそのまましてもダメだ。社長のキャラクタを良くみて、そのキャラクタにあわせた経営方針にしていかねばならない。そこを間違えないことだ。