組織の前半戦について ”絶”⇒”養”

今回も、組織の前半戦について見ていきたい。人生と同じように、組織も100年設計とすれば、目標設定や発達段階への対処が可能となるのだ。今までは、組織を100年設計しようという発想すらなかった。生命体として捉えようという発想すらなかった。だから、いかにお金を稼ぎ、効率を重視し、力技にて組織をマネジメントするという方法が採られた。しかし、令和の時代は、人生も100年設計するために人生の目標設定を今一度、皆がやり直しを迫られているのと同様、組織もまた、100年設計するために組織の存在目的やマネジメントを今一度、すべての組織がやり直しを迫られているのだ。

 

組織は0~19年目までは社長のキャラクタが強く組織に影響するのであるから、社長のキャラクタを全面的に出していけば良いということになる。今回は、具体例として、下記の会社について見ていきたい。

 

ラクスル株式会社 社長:松本 恭攝 氏  以下こちらより抜粋

1984年10月生まれの富山県出身である松本氏。家族親戚はすべて公務員という環境で高校まで過ごした。慶応義塾大学1年の時に学生団体の立ち上げに参加したことをきっかけに「ゼロから一を生み出す」ことの楽しさを知る。卒業後は外資コンサルティングファームA.T.Kearneyに勤めたが、自分が市場を創造することへの願望が強くなったことと、印刷業界の革新による新たなビジネスの可能性に手ごたえをつかんだことから企業を決意したと。2009年にラクスル株式会社を設立した。

 

「仕組みを変えれば、世界はもっとよくなる」をコンセプトに不透明な印刷企業界に市場価格を作り出し、発注者をと印刷会社両方にとってよりよいサービスを展開している会社である。そして、インターネット上で名刺やチラシといった印刷物の受注を行う働く人のネット印刷「ラクスル」だ。自分の会社に印刷機を持たないで、全国の印刷会社をネットワーク化して、各社の印刷機の非稼働時間を利用して印刷を行っているそうだ。そして、複数の注文をまとめて印刷することによって版代のシェアと大量印刷によるコスト削減を実現した。高品質な商品を低価格で提供している。

 

・フォーブス誌「日本の起業家ランキング」2位(2016年)

フォーブスジャパン誌による「日本の起業家ランキング2016」ベスト10が発表された。そこで全国の印刷企業を網羅し革命を起こしたラクスルの社長・松本恭攝氏が第2位に選ばれた。フォーブスジャパンは2014年に初めて起業家ランキングを発表し2016年は2回目であった。新たに外部審査メンバーを迎え、より公平な立場から事業性・経営チームの完成度・グローバル展開・成長ポテンシャルなどから2016年を担う日本の起業家を選ぶ審査で2位を勝ち取った。2位に選ばれた理由は、

①約40億円の大型資金調達を行い、印刷業界の遊休資産を活用する「シェアリング・エコノミー」というビジネスモデルを進化させている。

②ユーザー数を直近1年間で約4倍にまで増加させている。

③印刷に加え、デザイン、マーケティング、郵送までサービスを拡張させており、売り上げ成長率は3年で2100%と驚くべきほどの右肩上がりを記録した。

④完成度の高い経営チームで海外展開も狙うなどが高く評価された。

 

 

では、組織の前半戦である創業~現在に至るまでを見てみよう。2021年現在で、創業12年が経過した。その経緯を見てみよう。まずは、下図が松本氏の生涯エネルギー遷移図だ。

○松本 恭攝 氏 1984年10月10日生

・個性:”墓”

・本質グループ:火(陰)

・生涯レール:土(陽)

・老年レール:金(陰)

 

松本 恭攝 氏の生涯リズムを見る限り、

発達課題第1段→ クリア

発達課題第2段→ クリア

発達課題第3段→ クリア

発達課題第4段→ △クリア?

発達課題第5段→ ×

発達課題第6段→ ×

発達課題第7段→ ×

発達課題第8段→ クリア

というのが見える。

 

このような場合のカルマは第4段、第5段になる。特に、”自我確立”という第5段のカルマが重くのしかかる。生涯かけて、この”自我確立”と向き合っていくのであろう。その前に、”劣等感”という第4段のカルマもやや重くのしかかるのだろう。それゆえ、どんなに働いても、会社が大きくなっても、まだ足りない、まだ負けているという感覚に襲われ、いったい自分の会社は何処に向かい、どんな存在なんだろう?という自問自答を繰り返すことになるかもしれない。

 

まずは、人生の前半戦である未成年の時期を見てみよう。下図のように、児童期(7~12才)の頃に、”養”というキャラクタに乗っていく時期なのだが、幼児期(1~6才)の頃の”絶”というキャラクタから、”養”というキャラクタは、親友の関係ゆえに、容易に乗れる。そして、青年期(13~19才)のキャラクタは”墓”だが、”養”というキャラクタから”墓”というキャラクタは、緊張と試練の関係ゆえに、やや乗るのに苦労したかもしれない。もしかしたら、まだ十分に乗り切れず、大人になっているのかもしれない。

 

この”墓”という自我を確立できれば、人生の前半戦はクリアできるのであろうが、ここが松本氏の場合、多少困難な様子。何せ、児童期は”養”というキャラクタであり、初対面の相手には強い警戒心を示すところがあり、典型的な「人見知り」タイプだ。穏やかに見えるが、人の好き嫌いも激しく、理不尽なことは見逃せない強い正義感を持っているので、友好関係が偏る傾向がある。一方、青年期の”墓”は、周囲に溶け込むのがうまく、雑学的な知識や豊富なユーモアでどんな相手とも楽しい会話が出来る人である。互助の精神を大切にしているので、和を乱すような人や行為を許さず、他人にも自分と同じような協調性を要求する。世間の目や周囲の空気に敏感で、人から批判されるようなことはしない。それゆえ、やや異なる接し方になるため、多少の乗りにくさはあるだろう。

 

強いリーダーシップはないが、厚い義理人情と、元来の世話好きに加え、行き届いた気配り目配り力で、なんとなく皆をまとめ、その気にさせるのが”墓”の特徴である。正義感も強く「世のため人のため」が信条で、人に尽くすことに喜びを感じる。仕事では企画、構成力に優れ、知的な分析力で難題を解決していくが、同時にいくつかのことをこなす器用さはない。競争意識の激しい職場ではなく、アットホームな環境で力を発揮するため、会社もアットホームな雰囲気にしていくと良い。

 

律儀で義理堅く、世間体を大切にするので、責任感は強く、物事を途中で投げ出すことはない。人さまから後ろ指を指されるようなマネは決してしないのが”墓”である。無責任な行動を嫌い、個人的なミスでも、かかわった人間すべてに共同責任を取らせる。しかし、責任問題になっても、自分に非がないと感じたら、絶対に謝らない。部下のミスを黙ってかぶる気概や矜持より、キャリアに汚点が付くことを許さない実利を取る。正義感が強く、嘘がつけない性格もあり、うやむやにはできない。

 

和を尊ぶ寂しがり屋の”墓”がなにより恐れるのが孤独である。「あなたには関係ない」「内緒です」など、疎外感を感じさせる言葉には、深い意味はなくても大ショック。飲み会や食事会などの誘いはもちろん、公私ともにありとあらゆるイベントや集まりには必ず参加したい方だ。仲間外れが一番ストレスなので、気を付けよう。人のためと思って気を使っているので、「よけいなお世話」「重い...」は心外。また全方位の外交を心がけているので、会社内だけでなくあらゆる関係者、協力会社、取引先と仲良くしていきたいと思うだろう。

 

 

2009年に創業し、最初の6年間は、”絶”というキャラクタで経営していくと良い時期なのだが、2015年までは、印刷会社の非稼働時間を活用した印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム事業を展開する。その後、2015年12月からは物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」、2020年4月から広告のプラットフォーム「ノバセル」事業も開始している。以下、こちらより抜粋

 

ちょうど2015年というのが組織形態を転換するのにちょうど良い時期であり、衝動型から順応型へと組織形態を変えていくと良かったのだが、ラクスル株式会社はまさにそうだった。2014年当時、正社員が15〜20名という規模だったのだが、退職率が30%くらい。決して良好とは言えない組織状態であった。その頃のラクスルは15億円という大型の資金調達を行い、会社自体が急激にグロースをしていたフェーズであった。そうしたこともあり、即戦力で活躍できるスキルを重視した中途採用を行っていった。毎月新しい人を迎えるような状態だったのだが、ラクスルのビジョンやミッション、バリューの共感度が低く、スキル重視で入社したメンバーがたくさんいた。そこで、ほころびが出てしまったのであろう。

 

そこから「会社を創りなおす」くらいの改革をした。ラクスル(株)のようなスタートアップは構造上、起業家・ファウンダーが勢いよく成長する一方で、その他のメンバーがその情報量や成長について来れなくなるという課題がある。その課題を払拭するためには、起業家・ファウンダーとメンバーの結節点を作る必要がある。その上で、ビジョン・ミッション・バリューを再定義し、浸透させることで経営サイドとメンバーのベクトルを合わせていく必要がある。これがちょうど2015年あたりだ。衝動型から順応型へと組織が規律正しく、規範に則ったマネジメントで動くように、組織改革を行ったのだ。

 

この順応型へと組織を改革していく際に、ビジョン・ミッション・バリューを再定義していくわけだが、ここで、社長である松本氏のキャラクタが”絶”から”養”へと変わる。それゆえ、ビジョン・ミッション・バリューも”養”というキャラクタを反映したものにすると、とても良いのだ。

 

”養”のキャラクタとは、プライドと情熱を内に秘め、与えられた仕事を地道にコツコツとこなす誠実さは、周囲の信頼を集める。基本的には安全主義で、受けて立つ守備力の高さが”養”の長所。円満な人間関係と秩序を重んじるので、他人を蹴落としてまでもという、粘りや野心はない。完結目前のところであっさりやめてしまったり人に譲ってしまう執着心の薄さは、”養”の魅力でもあり、短所でもある。人を見る目、世の中の動きを察知する感性や、人を教育し、指導する能力に長けている。真面目で融通がきかない”養”は、誰よりも、なによりも「嘘」を嫌う。たとえ冗談のような嘘でも、些細な嘘でもごまかせない。

 

 

そこで、ラクスル(株)が明確化したビジョン・ミッション・バリューがどのようなものだったかというと、一つ目は、ラクスルがやらないこと」を明確にしたということ。例えば、ラクスルは「BtoB向けのシェアリングプラットフォームになる」と宣言しているので、BtoC向けの事業はやらない、といった具合だ。やらないことを明確にすると、その範囲で従業員が自由に動ける。会社として従業員に提供できる価値、例えば待遇なども同様だ。会社として従業員に提供できることと、従業員が会社に期待すること、この2つにギャップが無いことが理想である。そのために、会社としてどこに注力しているのかと同時に、どこに注力しないのかも伝えておくことが大切だという。

 

二つ目は、ラクスル(株)には、サプライヤー開拓やカスタマーサポートなど、現場に向き合うオペレーションを主体としたチームもあり、IT職だけの会社ではない。そこが一体となっていることが強みなので、各職種に応じて、ビジョン・ミッション・バリューを具体的な言葉で翻訳し、伝えている。全体最適をやりつつ、個別最適もしっかりやるということであろう。社員数が約200名になった現在でも、年1回は必ず合宿を行っているという。

 

ラクスル(株)は独自のカルチャーを作っていくためにも、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンを要素分解して、ラクスルスタイルと呼んでいる行動規範を次の3つに絞った。

実はこの行動規範は、そのまま人事評価の軸になっている。行動規範自体がコンピテンシーになっていて、社員のグレード別に要件が決まっている。逆にいうと、いくら結果を出しても行動規範に則っていなければ、会社としては評価しない、ということでもある。

 

ラクスルスタイル」は「Reality」「System」「Cooperation」。非常にシンプルなものだ。「Reality」は解像度を上げて、もっとリアルを深くミクロに見ていこうということ。「System」は仕組み。まずは手でやったものを仕組み化して、誰でもできるようにして、それをソフトウェアに落とし込んでいこうということ。「Cooperation」は連携。ラクスル(株)は非常にバリューチェーンの長いビジネスをしている。マーケターの横でエンジニアが仕事をしていて、60歳の元印刷機メーカーの社長や、元トラックのドライバーもいる。この多様なメンバーがしっかりと連携しないと、最終的なユーザーエクスペリエンスに繋げられない。この3つを体現することが、ビジョンの実現に繋がる、という接続を行ったのである。地道にコツコツとシンプルに、人脈を構築するというスタイルは、まさに”養”のキャラクタとマッチした、とても良い行動規範であったと思う。

 

 

いかがであろうか。創業時の衝動型から順応型への変化が、ものの見事に行われており、まさに理想的な転換であった。次回、続きを記載していきたい。