第5次元:産業という生命体の目標設定について②

先までは、第1~10次元における方向性について見てきた。今度は、具体的な目標設定にまで踏み込んでみたい。目標設定が出来れば、どうやって行動すれば良いか、メドが立つのであろうから。

 

なお、繰り返し記載するが、我々は1つの次元だけに意識を置いているようでは、上手く立ち回ることができない。常に4つも、5つも、多ければ10もの次元を同時に意識していくことで初めて、上手く立ち回ることが出来るのである。それゆえ、これから1つずつ、各次元での目標設定の立て方を記載していくので、実際にやってもらいたい。同時に意識していくことはとても難しいのだが、やっていくことで少しは慣れて出来るようになってくるのだから。今回も、第5次元:産業の目標設定の続きを見ていきたい。

 

先に、産業という生命体の目標設定において、課題を見いだし、そこに対して各部位が何が出来るのか?ということを見ていくべきだと記載した。その中で、自分が家具・建具の代表だ!と仮に意識するのであれば、”巣ごもり需要”というのが一つのキーワードになることは間違いないのだろう。この”巣ごもり需要”なるものに、恩恵を受けている業界と受けていない業界が明確に分かれる。巣ごもり需要というのは自宅周辺で何かをするための需要であるため、そこに関連しないような業界は恩恵を受けにくいということだ。百貸店は一等地に大型店舗を構え、密になる環境を作り出すモデルであるため、”巣ごもり需要”とは真逆となり、恩恵を受けにくい。このような課題を抱えたまま、今もなお、産業という生命体は動き続けている。それゆえ、各部位は、どんな役割を果たしていけば、この課題を解決できるのかを真剣に考えていくのである。

このような12部位の生命体モデルとして産業を捉えたとしよう。すると、脳の役割である百貸店が機能不全に陥るほど苦しく、総合スーパーもイオンなどが怒濤の出店ラッシュを続けて尽力はしているが、百貸店と構造は同じであるため、かなり苦しい。大規模でなくとも、小規模百貸店のようなコンビニエンス業界に取って代わられるのかのかもしれない。さらに腸の役割である燃料も高騰し続けており、かなり苦しい。燃料に関しては、ガソリンや灯油の需要が、電気自動車や電気ファンヒーターに取って代わられていくため、需要が見込めない業界だ。また、アパレルも厳しい状況は続きそうだ。それゆえ、今後はその役割を他の業界に交代することになるのかもしれない。これは世の中のニーズの変遷によるので、やむを得ないことなのであろう。

 

代わって入る3つの業界として、”コンビニエンス”、”ロボット”、”ドローン”が入ってくるのかもしれない。この3つは今後、大きな伸びを見せていく業界となるのであろうから、中心的な部位に配置させる方が良いのかも知れない。そこで、新たに産業という生命体を捉えたとすると、下記のようになる。

 

 

コンビニエンスが脳の役割を担っているのが違和感はあるが、このモデルで安定した生命体として存在できそうだ。あくまで、自分が捉えるイメージでよい。生命体モデルを自分なりに構築して、自分なりに各部位の役割を担い、その役割に責任をもって行動を実行していく。これが目標設定の考え方なのであり、人と議論を重ねて生命体モデルをブラッシュアップしていけばよい。議論を重ねていく内に、徐々に、よりよいモデルへと進化していき、自分自身の役割も変化し、行動も変容していくことにもなるのだから。

 

自分自身が上記の12部位の生命体モデルで産業を捉えたとしよう。すると、右足の役割はドローンであったが、自分は右足の役割を担うぞ!と意識を高めて、何が出来るのかを考えていたとしよう。すると、新しいニーズを開拓すべく走り回るのであろう。一方、自分は膵臓の役割である家具・建具の役割を担っているとした場合、今後のリフォーム重要を捉え、他の業界を差し置いてでも波に乗ろうと思うだろう。このように、各部位を捉えると、産業という生命体は纏まりが無く、バラバラな方向性に向かうことになってしまうのであろう。なぜなら、コンビニエンス業界が産業を牽引するその方向性が、他の家具・建具や自動車やドローンという業界とは無縁の方向性だからだ。まったく種が異なる業界なのである。各業界が関連性が無さすぎて、相互作業がまったく働かないのだ!

 

この原因は、生命体にビジョンが無いからだ。単純に12部位なる業界が集まったとして、さあ、どうしよう?と言ったところで、何も解決しない。お互いに向く方向性が分かっていて、何が課題かも共有できていれば、その課題を克服できるのだ!第6次元:日本国という生命体であれば、東京都が脳の役割で日本国という生命体を牽引するのは良いが、一極集中過ぎるだろ!という課題を他の地域が共通認識しているから、課題を解決できるのだ。

 

では、小売業という産業が向かうビジョンは何処なのか?コンビニエンス業界が牽引するとするなら、24時間営業という方向性に他の業界も向かうのか?それは無いだろう。現在、小売業を手がける企業は、実地店舗での商品販売を中心としている。しかし、ネットショッピングが浸透した今、実地の店舗で買い物をする機会は減っている。いつでもどこでも必要なモノが手に入る時代に、消費者に商品を買ってもらうためには新たな取り組みが必要であろう。小売業界では近年、「お店に行きたい!」と思わせるような体験価値創出の試みがなされている。

 

これはコンビニエンス業界でも同様だ。セブンイレブンはコーヒーメーカーを独自に開発し、店内で美味いドリップコーヒーが飲めるということで、大ヒットを記録し続けている。まさにセブンイレブンに行けば、美味しいコーヒーが飲める!ということで、事あればセブンイレブンを探すという習慣がすっかり出来てしまった人も多いだろう。ついでにお弁当やマスクやその他備品を購入することも多いだろう。

 

ニトリなどの家具メーカーも同様だ。入り口付近に、総合ディスプレイエリアを設け、実際の住空間をイメージできるような、まるで理想の家の中のような、ディスプレイを数種類に分けて展開している。このディスプレイを見て、こんな風にすればいいんだ!と参考になるので、わざわざニトリへ出向いてイメージを膨らませるという人も多いだろう。決して家具単体ではイメージできない家の中のシーンを再現してくれるのは、とってもありがたいサービスであろう。

 

また、スーパーなどの食品関連は、生ものなので、わざわざ来店するのは当たり前なのであろう。自動車や電気機器も、やはり高い買い物であるがゆえに、一度は試乗したり、使ってみたり、しないと直ぐに購入はできないので、来店するのであろう。あとは値引きやポイント還元などのサービスで、お客を奪い合うというようなことになるだろう。

 

このように小売業の課題は、わざわざ来店してくれるかどうかポイントとなる。来店してくれさえすれば、商品説明やオプション提案などのサービスが出来るのだが、来店してくれないことには何もできない。来店しないのであれば、アマゾンのようなネットショッピングに取って代わられて終わるだけだ。それでは長い小売業の歴史が途絶えてしまう。そうさせてはならない!何としても、小売業という産業を衰退させてはならないのであり、我々がそれを守っていかねばならないのだろう。

 

 

・店の雰囲気作り こちらより抜粋

来店してもらうためには、お店の雰囲気がなんと言っても重要だ!薄暗いお店には誰も寄りつかないのであろうし、しつこくセールスが寄ってくるお店も寄りつかなくなるであろうし、雰囲気作りは極めて重要だ。

 

最近のお客様は売り込まれることを非常に嫌う。そのため、いきなり売り込みと思われるトークは極力避ける必要があるだろう。売り込みと感じさせないアプローチの一番いい方法は、お客様から声を掛けられたときに接客するのが一番だが、それだけではファッション等の業種では、衝動買いを促すチャンスを失ってしまう。こういう場合、下記のようにアプローチすることで、威圧感のないスムーズなコミュニケーションが生まれることが提唱されている。

・お客様が何か商品を探している場合は、「お探ししましょうか?」
・お客様が商品を見ている場合は、「よかったらお出ししましょうか?」
・商品を触って何回か見ている場合は、「他のサイズもそろっております?」

 

すでに買いたい商品が決まっている場合は問題がないのだが、決まっていない人には、少々売り込み色を感じるアプローチである。衝動買いを数多く獲得するには、特定の商品を探していない人たちとのコミュニケーションも重要になる。その空気を察した場合は、下記のアプローチ等が最適であろう。

・お店の説明「当店の奥には、○○な商品(衝動買いされやすい商品)も置いていますので、ぜひご覧ください」
・売れ筋の説明「今、この商品が当店で一番人気です」
・次のコミュニケーションに繋がるトーク「当店ははじめてでしょうか?」

 

ドラッグストアの化粧品売場では、お客様が来店したときに、「いらっしゃいませ」と大きめの声でアプローチを行う。商品選びでお客様がアドバイスを求めているときには、近づいて「いらっしゃいませ」と改めて声がけし、ファーストコミュニケーションを成功させている事例もある。

 

全国に80ヵ所あるカルディコーヒーでは、女性スタッフがお店の入口近くで、来店したお客様にいれたてコーヒーをふるまっている。コーヒーの入った紙コップを受け取ったお客様は、そのまま店内に入り、コーヒーを飲みながら買い物をする。通常の小売店では、試食を除けば店内での飲食は禁止であろう。無料のコーヒーサービスは珍しい試みである。

 

当方も実際に来店し、サービスを受けたことがあるのだが、女性スタッフの表情も笑顔で大変気持ちがよく、もらったコーヒーが飲み終わるまで7~8分店内にいたので、思わず衝動買いをしてしまった。滞店時間を長くしたいお店は、このようなサービスを実施されてはいかがであろうか?「ウチのお店では、スタッフが足りなくてできないよ」というお店もあるかもしれないが、お店のビジネスは、時間帯ごとにお客様の入りに変化がある。お客様が少ない時間にはスタッフが余っていることもあるので、その時間帯のみ実施してもよいのであろう。

 

現在は実施されていないが、スーパーマーケットやドラッグストアでは、キャスターつきの買い物カゴの脇に、ドリンクを入れておくスペースを作っておけば、コーヒーや紅茶を飲みながら、リラックスしてショッピングしてもらうことができ、予定になかった商品まで購入する(衝動買い)現象が起こるかもしれない。メーカーが考える通常の販促支援は、直接的な売上アップの軸(客単価アップ・購入頻度アップ)から提案するが、滞店時間のアップ、回遊率アップというインストアマーケティングの軸からの提案も今後考えられるであろう。実施の場合は、衝動買いの可能性の高い、エンド売場やレジ前に自社商品を陳列することを条件にする。

 

 

このように、小売業の最大の課題は、来店して貰うこと!であろう。来店してくれさえすれば、あとはどうやって購入して貰えるか、その確率を上げる方法を考えれば良いのだから。そのためには、『お店に行きたい!』と思わせる何かがないと、なかなか来店してくれない。自動車の販売で、レクサスの店舗は、徹底したサービスを行うことで成功した事例であろう。日本に、新たなブランドであるレクサスを受け入れてもらい、お客様に来店して貰うためにも、徹底した従業員教育を行い、レクサス独自の接客を目指した。それにより、お客様は、接客が気持ちよすぎて、来店する人も増えた。レクサスというブランドが確立出来たのは、その接客スタイルが、車の価値を高めたと言っても過言では無いのである。

 

それほど、来店して貰うための仕掛けというのが重要なのだ。セブンイレブンのような味なのか、スーパーのような値引きなのか、ニトリのようなディスプレイなのか、レクサスのような接客なのか、業界それぞれ、独自の方法でお客様を呼んでいるのであり、総じて、小売業という産業は、いかに『お店に行きたい!』と思わせるかどうかが、課題なのである!ネットショッピングではなく、外に出て、お店に立ち寄って貰うためにも、小売業の各業界が連携して、仕掛けを作っていくこともこれからは重要なのであろう。他の業界は無関係で、自分の所にさえお客が来れば良い!という考えでは、なかなかお客は呼び込めないということをもっと認識していかねばならない。

 

いかがであろうか。課題から目標設定に必要な道しるべを見いだす過程が上記だ。ここまで具体的にやるべきことを明確化していけば、自分が何をせねばならないのかが、見えてくるし、具体的な目標設定、行動計画へと落とし込めるという訳だ。