第5次元:製造業の方向性

先に組織のバランスについて記載した。いかにバランス感覚が重要かが理解できたと思う。ぜひやってもらいたい。さらに、もう1つ組織のバランスで付け加えるとしたら、以前から記載している第1次元~第10次元までの視野をバランス良く持つことであろう。何せ、第1次元~第10次元までの生命体の維持・運営の仕組みを参考にすれば、第3次元:ティール組織という生命体の維持・運営の方法が全然違って見えてくるのだから!

 

ということで、今回は、第5次元:製造業という生命体について見ていくことにする。今回は、製造業という生命体が、今後どのような方向性に進んでいくのであろうか、それを見ていきたい。

 

 

・受発注プラットフォーム こちらより抜粋。

日本には高い技術力や得意技を持つ町工場がたくさんあるが、全体の75%は赤字経営で、過去30年間に約半数が消滅した。世界的に見れば、日本の製造業のポテンシャルはとても高く、「メイド・イン・ジャパン」のブランドは健在だ。日本のモノづくりは約180兆円で、そのうち120兆円は部品調達が占めているが、この部品調達のプロセスの分野は100年以上、イノベーションが起きていない。

大手メーカーが作る装置は、半導体や液晶パネル製造、食品・包装機械や各種検査装置などさまざまであるが、多品種少量生産の領域では、1つの装置に数千点の特注部品を使う。メーカーは本来であればその1つ1つの部品について最適発注ができれば良いのだが、その数が膨大なため下請けである複数の町工場にまとめて数百点の相見積もりを出させる。その中から一番安いところに発注し、さらに「あと5%下げてくれ」「10%下げてくれ」と価格低減の交渉をする。今の下請け構造では、ほとんどの町工場は1~2社に売り上げの大半を依存しているため、結局要求を飲まざるを得ず、赤字を出し倒産していくのである。


例えば、板金加工の会社は全国に約2万社あるが、その9割以上は従業員9人以下の零細企業である。コロナ禍で取引先が不景気になると、町工場は途端に経営に行き詰まってしまう。高い技術を持った町工場には、外部環境に左右されずに本来の強みを発揮してほしい。そのためには、町工場とメーカーをマッチングする受発注プラットフォームが必要なのかも知れない。

CADDiの受発注システムのプラットフォーム
図:CADDiの受発注システムのプラットフォーム
資料提供:キャディ株式会社

 

受発注プラットフォームにはパートナー企業である町工場から提出した材料単価など数十項目の共通データのほか、訪問やヒアリングで得た加工機械の種類、技術力、加工に必要な時間など、個別のパラメーターがたくさん入力してある。メーカーが、発注したい部品の3次元CADデータとともに材質、数量、溶接、塗装、メッキなどの図面や仕様を受発注プラットフォームにアップロードすると、プラットフォームのAIにて、双方のデータをアルゴリズムで分析し、生産に最適な町工場を選び出して価格と納期の見積もりを回答するという。


特注部品は板金、切削、製缶など多方面にわたり、従来の調達では膨大な管理工数がかかり、見積もりを取得するのにも数日から2週間も要する。その点、AI掲載の受発注プラットフォームであれば、メーカーはさまざまな技術を要する部品の見積もりを瞬時に得られ、一括して買うことができる。管理工数が減るほか、最適な工場で作るので原価を安くでき、10~20%のコストダウンが可能になるかもしれない。

 

町工場は、相見積もりの作成が不要になることが大きなメリットの1つである。社長の仕事の半分は見積書の作成に費やされている。昼は工場で働き、夜や週末は見積書を作るというパターンですが、受注率は2割ほどで、残りは無駄な作業になってしまう。受発注プラットフォームは、相見積もりなしで最適な1社を選び、原価を積み上げ、適正な利益を乗せた上でメーカーに提示する。ロジックに合わない感覚的な価格提示は行わない。これまで町工場は1業界や1社への依存度が多かったのだが、受発注プラットフォームを使えば複数業界との取引が可能になるのだろう。

 

・スタートアップと製造業 以下、こちらより抜粋。

2012年から2017年にかけて日本国内のスタートアップの資金調達額は4倍以上に拡大している。平均資金調達額も3億円を超え、初期投資が高額になりがちなハードウェアスタートアップにも明るい兆しが見え始めている。しかし、いくら資金を投じても適切な開発/製造パートナーがいないことには製品化はできない。デジタルファブリケーションやメイカースペースの影響で1点モノの試作品や作品のハードルは大きく下がったが、2桁、3桁以上の量産や長期にわたる安定的な生産への道筋は依然としてMakerやスタートアップには厳しいままだ。

 

一方、町工場側はというと、2010年頃から特許切れによって安価な3Dプリンターが登場し、数万円で買えるモデルが家電量販店にまで並ぶようになった。「こんなものが出てきたら、自分たちの商売が奪われてしまうのではないか」という危機感を覚える町工場の経営者も多いだろう。現状を嘆くのではなく、3Dプリンターにしかできない加工技術や導入するメリットは何か正しく把握した上で、既存の加工技術との共存方法を模索する必要がある。

 

後継者不足や収益面の問題から日本国内の町工場は減少の一途をたどっている。現に東京・墨田区も町工場の数は最盛期の5分の1にまで減っている。町工場の減少を食い止める努力をしていく必要があったと同時に、多様化する社会のなかで新しい市場を生み出すチャンスもあった。

 

・試作と量産の間にある深い溝

浜野製作所の工場内部。Garage Sumidaのほかに3つの工場が稼働している。浜野製作所の工場内部。Garage Sumidaのほかに3つの工場が稼働している。

スタートアップが量産化に苦しむ背景の一つには、最終目標から逆算した試作開発という視点が欠けていることが大きい。試作で作っているものと、量産するものがイコールになっていないというのが、初期段階のスタートアップがつまずく大きな要因になっている。仕様書に普段量産では使わない素材の指定があったりするのだ。その素材はスタートアップのメンバー自身が要件を基に必要な素材をWebで検索し、数点のみ製造した試作品に採用したものだったりする。その素材は数台程度の製造であれば試作品製造会社を経由して材料メーカーから少量を調達できるが、2桁以上の生産をする場合には数十トン単位とまとまった量でしか取り寄せることができないため、とてもスタートアップが少量生産に使える素材ではなかったなどの問題が発生するのだ。

 

しかし1点モノの試作に特化した町工場の場合には、量産を意識することは無い。提示された予算と納期、図面に合わせたものを納めるのが常だ。そのため製品化に向けた試作品作りではなく、その場限りの試作品になってしまい、最終的なゴールに到達できないまま資金が底をつくケースになることも少なくない。こうした死の谷にスタートアップが陥らないためには、なるべく初期段階から量産までのイメージが描けるパートナーに相談することが重要だ。

 

工場側にとって手のかかるスタートアップとの案件は敬遠されることが多かった。しかし、近年ではスタートアップとの取引も対応する工場が国内に増えつつある。また町工場自身が、下請け体質からの脱却を目指して新たな事業に乗り出すケースも少なくない。しかし、いずれの道も早期に成功するのは至難の業であり、一定の成果を出すまでには相当の時間と労力を要する。

 

優れたパートナーと組むことで、自分たちの得意領域で開発を進めながら、それ以外の領域はその筋のプロフェッショナルに頼り、最短のコースで製品化に向けてひた走る。スタートアップや町工場といったバックグラウンドに関係なく、それぞれが独立したプロフェッショナルとして、製品作りに邁進できる環境を早期に構築できるかが生死の分かれ道と言えよう。それぞれが高い専門性を持つチームづくりに欠かせないのがコーディネーター的な存在だが、日本にはそういった存在が欠けている。多くのスタートアップが集うシリコンバレーでは、VCがコーディネーター的な機能を果たしていて、スタートアップに適切なパートナーや工場をマッチングすることで製品化を支援している。

 

しかし、日本ではそういったことができる事業会社はVCも含めて非常に少ないのが課題だろう。スタートアップへの支援が手厚い海外の先進国と比較すると、製造業の分野で起業しやすい環境だとは言い難い。製造業という生命体が躍動していくためには、この課題はとても大きい。製造業は日本国にとって基幹産業である。その基幹産業が3Dプリンターや量子コンピュータやAIなどの登場で、さらに危機に追いやられている。技術力の開発もさることながら、それらをマッチングさせる環境というのもとても重要なのであろう。

 

 

いかがであろうか。製造業という生命体の方向性として、技術開発もさることながら、それらを支援する・マッチングさせる環境がまだまだ整備が行き届いていない。その環境を開発していくことも、製造業という生命体を躍動させていくために、必要なことなのかもしれない。