第4次元:再生医療業界の方向性について

先に組織のバランスについて記載した。いかにバランス感覚が重要かが理解できたと思う。ぜひやってもらいたい。さらに、もう1つ組織のバランスで付け加えるとしたら、以前から記載している第1次元~第10次元までの視野をバランス良く持つことであろう。何せ、第1次元~第10次元までの生命体の維持・運営の仕組みを参考にすれば、第3次元:ティール組織という生命体の維持・運営の方法が全然違って見えてくるのだから!

 

ということで、今回も、第4次元:業界という生命体について引き続き見ていくことにする。今回は、再生医療業界という生命体が、今後どのような方向性に進んでいくのであろうか、それを見ていきたい。

 

3Dプリンターの進化 こちらより抜粋

移植のための人工臓器を3Dプリンターで作り出す研究開発が進んでいる。このたび実際の人に近い微細な気道を印刷によって作成することに、スウェーデンのルンド大学などの国際研究グループが成功した。材料科学の専門誌『Advanced Materials』で2021年1月に発表した。

 

・肺移植のための人工肺を作り出す

論文によると、肺が機能不全を起こしてしまう慢性肺疾患は、世界の死因の3位となるが、重症化すると治療の選択肢が限られ、最終的には肺移植に頼るしかない。移植には肺のドナーを確保する必要があるが、ドナーの不足により治療ができないケースも少なくない。

イメージ画像(出所:Getty Images)

 

このたびルンド大学の研究グループは、移植肺の代替になる人工的な肺の作成を目指して、3Dプリンターによる人工的な気道の開発を進めた。気道は細かい構造になっており、血管も入り組むので、印刷で作るのはハードルの高い臓器だ。研究グループが考えたのは、気道の大元になる幹細胞をインクに混ぜて、そのまま印刷するプロセス。幹細胞が印刷された足場で成熟して、微小な構造も人工的に作成可能と想定した。課題は、通常のインクでは細胞を含めた印刷は難しいこと。そこで、海藻に含まれている天然のポリマーであるアルギン酸と、肺の組織の周囲にある「組織外マトリックス」を組み合わせるバイオインクを作り出した。

 

・細胞を含んだまま印刷できる

新たに作り出したバイオインク3Dプリンターの組み合わせによって、そのまま気道を印刷により作り出すことが可能となった。印刷後にバイオインクで作られた足場の中で細胞が成熟し、適度な弾力性も手伝って組織の成熟に適切であると考えられた。印刷では複数のタイプの細胞を使うのではなく幹細胞だけを使うので、印刷のノズルを単純化できたという。今後は、単純な気道だけではなく、ガス交換の場となる肺胞も作り出す計画。さらに印刷の解像度を高める必要があるという。将来的には移植可能なより大きな組織の作成につなげたい考えだ。

 

以下、こちらより抜粋

今から10年前。東日本大震災直前の3月、世界中の素晴らしいアイデアを持った人々が未来への展望を語り合う「TEDカンファレンス」で衝撃のデモンストレーションが行われた。医師のAnthony Atala(アンソニー・アタラ)が「腎臓を印刷する試み」と題した講演を行い、実際に壇上で印刷された臓器を手に取って見せたのだ。「印刷」と聞くと、首をかしげる人もいるかもしれないが、いわゆる3Dプリンターでの立体印刷のことだ。通常、3Dプリンターでは樹脂やナイロンの粒を噴出して立体をつくるが、このデモではその代わりに細胞を噴出して臓器をつくったのだ。再生医療の世界でも今、最も熱い注目を集める「バイオ3Dプリンティング」と呼ばれる技術が、医学の世界の外に知られた瞬間だった。

一方、この講演を見て歯痒い思いをしていた人たちも少なくない。佐賀大学の中山功一教授もその一人だ。彼は前年の2010年、まさにこの分野で起業をし、サイフューズ社を立ち上げたところだった。当時、彼以外にも世界中で多くの研究者が、このバイオ3Dプリンティングの研究を進めていた。

アンソニー・アタラ医師がTEDカンファレンスで紹介したバイオ3Dプリンター

アンソニー・アタラ医師がTEDカンファレンスで紹介したバイオ3Dプリンター

バイオ3Dプリンティングは何がすごいのか。現在、事故や病気などで自分の臓器が使えなくなると、ほかの部位の似た臓器を移植したり、大きな臓器では、事故などで亡くなった人の臓器を提供してもらい移植を受けたりする必要がある。しかし、亡くなった人の臓器はそうそう都合よく手に入るものではないし、場合によっては体質に合わず拒否反応などが出る可能性もある。

バイオ3Dプリンティングは、こうした課題をクリアしてくれる技術として注目を集めているのだ。今後、iPS細胞の研究などがうまく進めば、今よりも若い状態の臓器をつくり出せる可能性すらある。生物の身体の必要な部位だけをつくり出せるバイオ3Dプリンティングの応用は移植だけではない。変わったところでは、バイオ3Dプリンティングの技術を使って食用肉をつくるといった研究をしている人たちもいる。

また、医療目的で、急速に注目を集めているのは、人工的につくった身体の部位に、薬を与え、その効果や副作用を見る創薬への応用だ。この分野の急速な成長を受け、バイオ3Dプリンター用に素材となるゲルを提供している会社がIPO(新規株式公開)をしてしまったほどだという。

 

 

一方で、人体移植のためのバイオ3Dプリンティングの技術の進歩はかなりペースが遅い。3Dプリンターで噴出して重ねただけの細胞は、まだ固まっておらずドロドロのゼリーのような状態。しばらくの間なら形を保てるがだんだんと崩れてしまって、人体への移植などには使えない。薬を試すくらいであれば、細胞がそこまで立体的な構造を保つ必要はない。昨今の創薬への応用が広がらない裏事情の一つだろう。

 

他方で、中山氏らが研究している剣山方式のバイオ3Dプリンティングは、剣山のような極めて細い針の山に細胞を刺しながら臓器を形づくる。出来上がった臓器がある程度、形として固まったら剣山を抜いて、穴が埋まるのを待つ、という方式。崩れない立体臓器をつくれるという大きな強みがある。ただバイオ3Dプリンターで印刷するだけでなく、印刷した臓器(血管)を実際に人体に移植したという点では世界初の実績を持っている。

サイフェーズ社のバイオ3Dプリンターで印刷された臓器(血管) 画像提供:サイフェーズ社

サイフェーズ社のバイオ3Dプリンターで印刷された臓器(血管) 画像提供:サイフェーズ社

 

2020年秋には、京都大学医学部と中山氏らが起こしたバイオ3Dプリンティングのベンチャー企業、サイフューズ社らの協業で指先などの末梢神経の再生に世界で初めて成功。まもなく手指の末梢神経損傷患者に対する医師主導治験も開始するという。

サイフェーズ社のバイオ3Dプリンターにより臓器を印刷する映像

 

冒頭でも紹介したようにバイオ3Dプリンティングは、再生医療の中でも特に熱い分野であり、世界には異なる方式でこれに挑む研究者らが他にも大勢いるし、今後、どこがこの分野をリードするかは誰にもわからない。彼らが凌ぎを削ることで、バイオ3Dプリンティングが実用化され、亡くなった人からの臓器提供を待つ必要のない世界がすぐそこまできていることに期待を感じずにはいられない。

ちなみに、すべての基礎となっている3Dプリンターという技術革新は、元々1980年、日本の名古屋市工業研究所にて小玉秀男という日本人によって発明されている。彼が生み出した光造形法という3Dプリントの方法が、その後、歯科技工師の間で広まったことを考えると、一人一人で異なる体型や体質に合わせて個別生産できる3Dプリンターの技術は、元々、医療であったり移植であったりに向いていたのかもしれない。

 

 

いかがであろうか。再生医療業界も、大きな方向転換を向かえつつある。他人の臓器は、他人の細胞で構成された別の生きモノであると考えられる。それを自分の体内に取り込めば、T細胞が強烈な自己・非自己の判定を下すことになり、その判定に耐えられるような、だまし討ちなどの策略を講じない限り、拒絶反応を示されることになる。だから、臓器移植は極めて難しかったのだ。

 

一方、3Dプリンターで印刷した臓器は、自分の細胞で構成された、自分に近い生きモノであると考えられる。それを自分の体内に取り込めば、T細胞が強烈な自己・非自己の判定を下したとしても、その判定に十分耐えられ、拒絶反応を示されることは無くなる。このような再生医療の未来が見えて来つつあるということだ。その究極の目標は、形も機能も本物そっくりの臓器を作って、生体に移植できるようにすることだ。

 

いくら本物そっくりでも、生命を維持する血液やリンパ液の流れる血管系につなぐことは、まだ極めて困難なのだ。一部の軟骨などの非血管組織の作製は成功しているし、特殊なゲルやナノ繊維が含まれるバイオインクで、骨組織を支える足場材料の作製も報告されている。動物の心臓組織や血管、皮膚などを使った研究でも、多くの有望な結果が得られており、技術的には「移植可能な臓器の作製」という究極の目標の達成は近づいているように見える。現時点ではまだ技術的な限界もあるが、3Dバイオプリンティングは今後も着実に進歩を遂げ、多くの患者の生活の質を改善しそうだ。

 

このような方向性は、もう止まることはないだろう。とはいえ、我々個人ができることは、医療に頼ることがないよう、健康に留意し、食べ物に気をつけ、ストレスマネジメント、行動マネジメントを適切に行うことであろう。