第4次元:住宅業界という生命体の方向性

先に組織のバランスについて記載した。いかにバランス感覚が重要かが理解できたと思う。ぜひやってもらいたい。さらに、もう1つ組織のバランスで付け加えるとしたら、以前から記載している第1次元~第10次元までの視野をバランス良く持つことであろう。何せ、第1次元~第10次元までの生命体の維持・運営の仕組みを参考にすれば、第3次元:ティール組織という生命体の維持・運営の方法が全然違って見えてくるのだから!

 

ということで、今回、第4次元:業界という生命体について引き続き見ていくことにする。今回は、住宅業界という生命体が、今後どのような方向性に進んでいくのであろうか、それを見ていきたい。

 

消費者は、住宅に対して品質や性能を重視する傾向が強まっている。住宅金融支援機構の調査によると、消費者がハウスメーカーを選ぶ際のポイントとして、建物の性能と答えた割合が59%と約6割に達した。耐震耐久性や高齢化に伴うバリアフリー化、環境への配慮やデザイン性などで高機能な住宅を提供できなければ生き残りを図ることはできないとみられている。以下、こちらより抜粋。

住宅業界の将来性

新築住宅着工件数は2030年には54万戸に減少するとの予測

野村総合研究所の調査によると、少子高齢化による人口減少や持家の所有期間の増加、住宅の性能向上による長寿命化など複数の要因で、新築住宅の着工戸数は減少を続けるとみられている。この傾向が続くために、2030年の新築着工戸数は現在の約半数、55万戸になるとの予測まで出した。これらの推測が現実のものとなれば、新築住宅の着工増によるシェアの拡大は難しい状況だといえるだろう。

既存住宅を購入する世帯は2030年に全体の約5割に達する見込み

住宅の耐久性向上や価値観の変化などによって新築住宅の着工戸数が減るかわりに、空き家などの既存住宅を購入する世帯が増えるかもしれない。先程紹介した野村総合研究所の予測によると、既存住宅を購入する世帯の割合が2030年には全体の48%と、約5割に達するとみられている。この予測から、人口減少が進み、空き家が増えつつある地方に拠点を持つ中小規模の工務店などは、新築住宅のみを建設・販売するだけの経営では難しいかもしれない。

政府による後押しで既存住宅を活用した新ビジネスが進行する

人口減少が進む現在、新築住宅に偏重したビジネスモデルのままでは、空家率の増加や新築需要の減少が止まらないと危惧されている。そこで政府は、既存住宅の販売を中心とした「住宅ストック市場」の推進を図る「住生活基本計画」を、2016年3月に閣議決定して、住宅業界にビジネスモデルの転換を求めた。計画では2025年までに、リフォーム・既存住宅販売の市場規模を20兆円に拡大させ、既存住宅の流通量を現在の約2倍にあたる44万戸に増やしたいとしている。住宅業界もその流れに応える形で、既存住宅のリフォームやリノベーション工事を施した住宅の販売など新規ビジネスの推進を進めているのである。

 

 

監視社会 VS 人間らしさ

住宅業界も今後、二極化していくことが予想される。監視社会 VS 人間らしさ という二極化だ。日本国の未来がどちらを選択するかによって、第4次元:住宅業界という生命体もその影響を多分に受けて、未来図が描かれていく。

 

まずは、監視社会に日本国の未来が向かったときはどのようになるのだろうか、見ていこう。多くの都市、地域においては、まちづくりを進める上で、人口減少、高齢化、災害多発、感染症リスク等の様々な 社会課題に直面している。 これらの社会課題は今後ますます深刻化するものと危惧されている。そのような中、政府においては、行政のデジタル化を強力に推進する方針を打ち出した。 行政分野にとどまらず都市、地域全体のデジタル化を図るスマートシティを進めるチャンスではないだろうか。政府においても、新技術や各種データ活用をまちづくりに取り入れたスマートシティの推進を、Society5.0やSDGsの達成の切り札として強力に推進している。

 

 

安全・安心なスマートシティの構築・運営に資するため、スマートシティのセキュリティの考え方やセキュリティ対策に関するガイドラインを作成している。「ガバナンス」「サービス」「都市OS」「アセット」の4つのカテゴリに分類し、それぞれのカテゴリにおける対策のポイントと対策例について整理 ・レジリエンス(強靱さ)を確保するためには、異常や障害が発生した対象における重要度や、他組織、他システムとの依存関係を事前に整理することで、最適な対応(インシデント発生時の判断ミスを抑え、速やかなインシデント対応や情報連携)を行うことが可能となるとしている。こちらを参照

 

スマートシティ構想の「肝」は、政府や自治体、企業、個人など異なる主体が保有するデータの連結である。例えば、国は国民の年金納付や納税、介護や医療に関する情報などを保有している。自治体も各人の住民税等の納税、住民票や戸籍、教育、水道など公共サービスの利用状況等、多くの情報を保有している。企業はさらに多様な個人情報――金融機関であれば預貯金額、電子決済企業であれば購入履歴、さらにIT企業はインターネットの閲覧履歴、スマホの位置情報を通じた行動履歴などの情報を保有している。これら個人情報は、国、自治体、企業が各法令に基づいて適切に管理することが定められており、各主体が個人情報を勝手に提供しあうことはできない仕組みになっている。 

 

しかし、スーパーシティ構想ではこの垣根を取り払い、事業主体となる「国家戦略特区データ連携基盤」事業者が必要なデータを集めて管理・活用することができるようにしようとしている。法案には、データ連携基盤事業の実施者は、国や自治体にデータの提供を求めることができるとの規定が盛り込まれている。まさに監視社会の根幹となす構想であることがわかる。では、もう一方の人間らしさを追求した住宅の方向性についてみてみよう。以下、こちらより抜粋。

 

 

民族のアイデンティティーを希求する、ナショナル・ロマンティシズム

北欧3国の首都である、ノルウェーオスロスウェーデンストックホルムフィンランドヘルシンキ。遠い北国ながら、マリメッコIKEAイッタラなどのデザインを通じて、私たちにとって親しみが感じられる国々ではないだろうか。洗練されたデザインを誇る文化大国といわれるスウェーデンでも約1000万人、ノルウェーフィンランドは550万人前後だ。九州の人口が約1200万人であることと比較すれば、意外なほど小さな国々である。

3つの国が現在のかたちになったのは、そう古いことではない。スウェーデン支配下を脱し、ノルウェーが独立したのが1905年。フィンランド共和国の成立は1917年だ。これと前後する1880年〜1950年頃に、これらの国を中心に巻き起こったのが、民族のアイデンティティーを希求する「ナショナル・ロマンティシズム」という文化思潮だった。ナショナル・ロマンティシズムの歴史的背景には、近代国家の成立に加え、工業化が進んで市民が豊かになり、知的欲求が高まったことがある。これに、フランスのアール・ヌーボーやイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動の影響が加わっている。

アール・ヌーボーやアーツ・アンド・クラフツは、それまでの古典主義やゴシックなどの様式に代わって、自然界の事物や素朴な工芸が生み出す造形を志向した。その影響を受けながら、自国ならではの造形を求めたのがナショナル・ロマンティシズムである。ロマンティシズムという言葉は日本語に訳しにくいが、“ここではないどこか”に憧れる、または、遠く失われた過去を追い求めるような心情を指す。ナショナル・ロマンティシズムは、フランスやドイツのような欧州の中央でなく、周縁に位置する国だからこそ生まれたムーブメントだろう。そこには、自分たち民族の独自の文化的ルーツを、建築や絵画、文学などの芸術で表現したいという情熱がある。

 

ノルウェー独立の翌年に完成した旧ノルウェー銀行本社(1906年)も、ナショナル・ロマンティシズムに分類できる建築だ。正面外観は左右対称でアーチやオーダーを用いるなど古典主義の要素も見える。メインホールはガラスの天井で、当時これだけのガラスを使っていること自体は近代的だ。それと併せて、細部には渦巻きのような原初的なモチーフが用いられている。前述の木造教会などからの着想が流れ込んでいる。設計した建築家はレンガ職人の出身で、随所に見られる工芸的な造形にも納得だ。

1906年に建てられ、1988年に美術館に改修された旧ノルウェー銀行本社。階段手すりなどに独特の装飾が見られる

1906年に建てられ、1988年に美術館に改修された旧ノルウェー銀行本社。

北の海に向かって雄大な姿を見せる、王宮のようなオスロ市庁舎

さらに、注目したいのがオスロ市庁舎だ。完成したのは第二次世界大戦後の1950年だが、設計コンペの当選者は1918年に発表され、起工式は1931年に行われた。長い期間の中に設計変更もありましたが、第二次世界大戦後の完成とは思えないほどに豊かな装飾を持っている。ナショナル・ロマンティシズムの最後尾を飾る傑作といえるだろう。2つの塔が並び建ち、真ん中を海に抜ける軸線が通る。幾何学的な直方体で構成された合理的な形態でありながら、外壁にレンガを用いて素朴な風合いを感じさせる。一般には石材が公共建築の外観を飾る正統な素材だが、ここではノルウェー的なるものとしてレンガを使っている。しかも、部分的に斜めに貼るなど、工芸的な使い方である。

オスロ市庁舎(アーンスタイン・アーネバーグ+マグナス・ポールソン、1950年)

オスロ市庁舎(アーンスタイン・アーネバーグ+マグナス・ポールソン、1950年)

 

水の都としての場所性を引き立てる傑作・ストックホルム市庁舎

かつて絶対王制を築いたスウェーデンは、盛衰を繰り返したとはいえ、北欧の大国だ。首都ストックホルムには本格的な王宮や大聖堂が残る。デンマーク王がスウェーデン王として君臨した時代もあり、建築にもデンマークと似通ったところがある。均整のとれた古典主義的な建築の伝統を持つ。しかし、古典主義的なストックホルム宮殿は、それがパリにあってもサンクトペテルブルクにあっても違和感のない建築とも言える。その古典主義を脱し、“スウェーデンらしさ”を求めたナショナル・ロマンティシズムの傑作が、ストックホルム市庁舎(1923年)だ。スウェーデンからノルウェーが離れ、現在の国のかたちができた1905年に行われたコンペで、ラグナル・エストベリの設計が選ばれた。

ストックホルム市庁舎は、メーラレン湖に面して鐘楼を戴く塔を持ち、湖水に映る姿が詩情豊かだ。一方、建物側からは、アーチが並ぶ回廊を介して湖水を望む。この市庁舎の存在が、ストックホルムが水の都であることを印象づけている。場所の固有性を引き立てていることが、この建築の最大の特徴であろう。建物は中庭を囲むように執務室や議場が配置されている。湖に面した部分が回廊だ。列柱の上部はアーチで、上階には執務室が置かれている。窓の形や装飾、彫像などは、それぞれゴシック風だったりルネサンス風だったり、バロック的であったりと、多様な要素が混在していながら統一感がある。それは、スウェーデンという国そのものが、ゴシック様式の教会や古典主義的な王宮などの多様な文化を持っていることを象徴しているようにも見える。力強くもあり繊細でもある、説得力のある“スウェーデンらしさ”の表現である。

ストックホルム市庁舎(ラグナル・エストベリ、1923年)。レンガでも模様が描き出されている。右の写真が海に面した回廊

ストックホルム市庁舎(ラグナル・エストベリ、1923年)。レンガでも模様が描き出されている。

 

 

一方、日本はというと、日本の住宅業界のトップを走るのは、オリコンランキング7年連続No.1のスウェーデンハウスだ。北欧由来の住宅を提供し続け35年。しかし、いま、その地位も苦境にたたされている。このまま高額な北欧由来のナショナル・ロマンティシズム調の住宅を提供し続けられるのだろうか?コロナ禍で、世帯収入が減る一方、ウッドショックなどで住宅価格も高騰している。このままでは、購入者層がいなくなる可能性もある。

 

住宅市場の現状等を踏まえ、住宅業界が直面する課題を整理すると以下の3点。
・良質な住宅の次世代への承継
・ 住まい手のライフスタイルと調和した省エネルギーの実現
・新築需要依存から脱却した新たな発展

 

これらをどうクリアし、どうブランド価値を維持させていくのか、その方向性が問われるのだろう。住宅市場は、自動車市場と同様、日本の根幹をなす業界なのであるから、その方向性は極めて重要だ。スマートシティ化が進むのか、それとも北欧のようなナショナル・ロマンティシズムの方向にむかうのか、それを選ぶのは一人一人の我々個人なのである。ぜひ注目していきたい業界である。