人間力をアップさせるには?④

先に、人間力をアップさせるということについて記載してきた。自分の波動レベルを上げ、多次元視野を持ち、相手の心を動かしていくことが、人間力をアップさせるということだと記載した。今回は、これを瞬時にこなしていくスキルについて記載したい。

 

ゆっくりやるのと、スピードアップしてやるのでは、世界がまるで違う事は理解できるだろう。例えば運転も同じだ。50Kmの運転であれば、いろんなところに視野を向け、ゆっくりハンドルを切っていけば間に合う。しかし、120kmのスピード下での運転はそうはいかない。一瞬の判断ミスがもう命取りになる。ハンドルさばきも一瞬の誤操作が命取りになる。そう、スピードが上がると、途端に世界が変わるのだ。

 

先までの波動レベルを上げ、多次元視野を持ち、相手の心を動かしていくことを、ゆっくり時間をかけてやるのは出来るかも知れない。しかし、ほんの一瞬で全てをやらねばならないような危機的状況の場合、そんな余裕は無い。一瞬の判断ミスが取り返しのつかないことになったり、命取りになったりする。クレームや大きな商談で、一つの判断ミスや言葉の選択ミスがもう命取りになるのだ。そんなヒリヒリした場面で、流れるような所作や判断が出来る人こそが、すごいと言われる人なのであろう。

 

会社でも、そのような危機的状況に陥ることは少ないかも知れないが、そのような場面でもみごとに所作や判断を的確に行えるようになることこそが、我々が目指すべきことなのであろう。それにはどうすれば良いのか?それは、”思考を使わない”ということだ。これには、雀鬼桜井章一先生の教えがとても参考になるので、いかに引用したい。

 

・集中力とは意識を広げること

『皆さんは「集中力」というと、どういうイメージを持っているだろうか?一点に気持ちを集中させ、ほかのことを考えない状態?私が麻雀の実践で培った集中力というのは、それとはまったく違うものだ。一点だけに集中するのではなく、意識が広く全体に行き渡る感じだ。心を穏やかに揺らさず、360度あらゆる方向に自分の意識を広げていく。すると自分の回りのあらゆること、変化に気づくことができる。麻雀をやりながら、向こうで誰かがトイレに立ったなとか、誰と誰がしゃべっているなとか、後ろで誰かがタバコを探しているなとか。自分の背後の出来事まで気づき、見えてくる。そういう状態が私の言う「集中」だ。

 

一点に意識が向かうと、それに捉われてしまう。すると周囲で起こっている微妙な変化に気がつくことができない。それでは麻雀に勝つことはできない。麻雀は1対1ではなく3人との勝負だ。しかも136枚の牌の組み合わせは無限であり、そこから生み出される場の流れ、勝負の綾もまた無限に変化していく。麻雀をやった人ならわかるが、最初はピンフ手を作るつもりが、配牌の流れによって七対子の手になったり、対々和混一色清一色など、目指すべき手が変わっていく。また、相手の手の速さ、ポンやチーの鳴き、そしてリーチなどで展開が変わっていく。その時々刻々と変化する状況を素早く察知し、それに対応する力が求められる。

 

それだけじゃない。相手の打っている様子、姿を見て、その微妙な癖や変化を捉える。あいつは調子が悪くなったなとか、こいつはテンパイが近いなとか、どんな牌を欲しがっているなとか相手の状況を見る。それと同時に、相手の性格も見分ける必要がある。こいつは攻めには強いけど守りに入るとめっぽう弱い。こいつは威勢はいいけれど気が小さい。こいつは冷静だけど勝負をかけず守りを固める……。

 

 

・麻雀では小指の動きが大事になる

麻雀は、気づきのゲームだ。膨大でかつ微妙な変化に対してどれだけ気づくことができるか?その気づきができるようになるためには、頭を使って考えていては到底対応などできない。自分の中のあらゆる感覚、五感を研ぎ澄ませ、センサーを360度に向けなければならない。そして瞬時に判断して、その変化に対応していく。頭ではなく感覚でなければ無理だろう。

 

私がやっている競技団体「雀鬼会」の麻雀は、2秒以内にツモって切る。半チャンも15分あれば終わってしまう。普通の人たちから見ると、何も考えず機械のようにツモ切りしているように見えるでしょう。ところがこの速さでやることで、頭ではなく感覚で判断することができるようになる。また、そうでなければできることじゃない。彼らは2秒という瞬時の合間に、場の流れを読み、相手の動きを察知し、どんな手を目指し、何を切るべきかを判断する。そしてそのように的確に行動する。

 

2秒以内にツモって切るからには、体と手の動きも重要だ。ムダな動きが入ったらとても2秒では切ることができない。人差し指と薬指で牌の両端を軽く持ち、中指は軽く牌の上に置く。そして切る際に親指を牌の下の先端に引っかけて、くるりと指の中で一回転させて捨てる。ちなみにその際に重要になるのが小指だ。小指なんて一見何も働いていないように見えるでしょう?牌を切った後、手と腕を自分のほうに戻す際、小指を内側に巻き込む。すると力を入れずして自然に腕が自分のほうに戻ってくる。しかも次の動きに自然に入りやすい状態になる。だから動き全体がムダなく自然な流れになる。一見働いていないように見えるものほど、実は重要だってことです。

 

このように、ツモって切るまで2秒。そのわずかな時間で、普通の麻雀をやる人が10秒、20秒考えても追いつかない膨大な情報量を処理しているんだ。それができるのは頭ではなく感覚と体で打つから。だから雀鬼会の道場生たちは普通の子たちに比べてはるかに感性が磨かれ、「気づく」人間になっていく。そして体で反応できる人間になっていく。雀鬼会の麻雀は、2秒以内にツモ切りする。つまり頭で考えて打つ麻雀じゃない。感性と感覚で打つ麻雀だ。勉強ばかりしてきた人にはこれが難しい。頭で、理屈で考えてしまうから、どうしても時間がかかる。この「遅さ」が、実生活のあらゆるところに出てしまう。周りの人たちの様子や変化に気づくことも、それに対応したり、何か用意したりすることも遅い。

 

感覚や直感というのは、一瞬だ。雀鬼会は麻雀もそうだけれども、活動全体の中で「感覚」を重んじている。感覚を磨くことが人間として、というよりも生き物として大事だ。自然の動物たちを見てごらんよ。彼らは頭で考えて行動しているだろうか?そんなことをしていたら、いざというときに襲われて食われてしまう。あらゆる現象や状況の変化に、感性と感覚で瞬時に対応することができなければ生き残っていけない。

 

雀鬼会ではすべてにおいてリズムが大事になる。麻雀にしてもそのほかの活動にしても、日々の会話にしても。そのリズムに、勉強ばかりしてきた人間ほど乗り遅れてしまう。知性を重視して、知識ばかりため込んできたツケがまわっちゃったんだ。だから思考も行動も重いし、鈍い。「知識や情報をため込みすぎて、自分を重くしているんだよ」とアドバイスする。そして「よけいな知識なんて捨てちまいな。自分を軽くしな」と言ってやるんだ。

 

 

・力んでつかむから素早く離せない

ところが、自分が抱えているものが実はガラクタで、役に立たないシロモノだとわかっても、それを捨てることができない。捨てるということは、それだけ難しいことなんだ。雀鬼流の麻雀では、姿勢や立ち振る舞いを重視している。力を抜いて自然体で卓に向かう。上家が牌を捨てたことを確認し、静かに手を伸ばして力を入れず優しくツモる。流れるように牌を自分の元まで引き寄せ、目の前で牌を確認し、切る牌か自分の手元に残すかを一瞬で判断する。そしてやはり自然体のまま、流れるようにスッと自然に捨てる。

 

何気ない一連の動作だけれど、たいていは肩や腕などに、余計な力が入ってしまう。「力を入れて握ったら、次の動作ができないじゃないか」と教えている。次の動作とは、変化に対応することだ。私から見ると牌が指にくっついているように見える人がいる。指に力が入りすぎているから、捨てるときもスムーズに切ることができない。卓にたたきつけるように力を入れないと捨てられない。それはムダな力を使っているということ。「おいおい、そんなふうにつかんだら、牌が苦しいだろう」と言ってやる。

 

力んでつかむ人は、その深層心理の中で「何かを得たい」という気持ちが強い。そして一度つかんだものを「離したくない」という気持ちも強い。だからツモから牌を切って捨てるまで、全体に力が入ってしまう。まず姿勢を正して、力を抜く。力みを取りフォームを正すことで、心の中の欲の部分が消えていく。』

 

 

いかがであろうか。まずは、このような自然体の構え、姿勢、心の持ち方が重要なのだ。スピードを普段からアップさせて取り組む事で、余計な力が入ることを排除させていく。思考もしかり、所作もしかり、判断もしかりだ。迷っても思考しない。迷ったときは感覚を研ぎ澄ますことだ。それが結果として、最善の方向に向かう方法なのだから。これが雀鬼桜井章一先生の教えであるから、日々実践していってほしい。繰り返すが、ゆっくりやるなら簡単なのだ。目にもとまらぬ速さで流れるような所作や判断をすることがどれほど難しいことか。それを日々実践していくことが、人間力をアップさせる方法にもなるということだ!