第4次元:業界・団体の”マーケティング”を参考にする

今回は、第4次元:業界・団体について記載したい。

 

・スポーツ産業について

スポーツ産業全体の市場規模は約11.4兆円になるのだが、特筆すべきは「スポーツ興行収入」が占める割合の低さだ。以下、こちらより抜粋

  • 公営ギャンブル:約4兆円
  • 施設運営:約2兆円
  • 流通小売(の売上):約1.7兆円
  • スポーツ教育:約1.5兆円
  • 放送、エンタメ:約0.4兆円
  • スポーツ興行収入:約0.3兆円

がスポーツ産業の主な領域になる。試合の興行価値が高いからこそ、そこから派生する施設運営や小売、放送といった事業が成り立つのであろう。

「スポーツ産業とは?」概念図

 

スポーツが「スポーツ産業」として広がってきた背景として、「メディア」との関係は切っても切り離せない。スポーツ産業は、メディアとともに成長してきたといっても過言ではないだろう。理由としては、スポーツは注目度が高く、当時の新聞社はスポーツの結果などを記事にするとたくさん新聞が売れたり、テレビ局としても視聴率を稼ぐことができた。ましてや、テレビ放送であれば「生中継」である分、「編集」が不要なため、トラブルなく放送できればコスパが良かったのである。

 

「ライブ性」こそがスポーツ産業の価値であり、録画によるCM飛ばしがされにくいという点でもスポーツの放送には大きな価値があった。メディアとともに発展してきたスポーツ産業の次のステージは、「スポンサーシップ」であろう。スポンサーシップというより、「広告」「宣伝」といっても差し支えない。特に、1984年のロサンゼルス・オリンピックを機にスポーツの注目度の高さを活かした「スポーツ産業化」が一気に進んだ。

 

しかし、特に日本では地上波テレビ離れが進み、放映権を中心としたスポーツ産業の限界が露呈してきた。巨人戦の放映権が「1試合1億円」といわれていた時代もあったが、今やそれに依存したビジネスモデルは成り立たない。不景気により親会社依存のビジネスモデルの限界も露呈し、スポーツ産業において各球団・クラブが自身で収益化する必要に迫られている。メディア依存を脱却し、ファンが「試合」というスポーツ産業のコアとなる「商品」を最大限楽しめるようスタジアムや演出、イベントなどを充実化していくようになる。

 

 

・スポーツ産業の新領域

「試合」という結果をコントロールできない商品から派生するスタジアムでの体験、たとえば試合前の時間を楽しむボールパーク的な要素やバラエティ豊富でオリジナルな飲食やグッズ、試合合間のイベント企画などに注力し、ファンがスタジアムで過ごす時間と、それに伴う消費を伸ばしていった。

 

上記で挙げたスポーツ産業の領域例は代表的なものだが、近年はさまざまなテクノロジーやスポーツ産業とのかけ合わせが広がっており、異業種からのスポーツ産業への参入が大幅に増加している。代表的なのが通信(5G)を始めとしたIT領域とスポーツ産業の組み合わせだ。特に通信キャリア各社は、5G技術を活かした試合中継のコンテンツ充実化に躍起になっており、コロナの影響でスタジアム観戦が限られるなか、スマートフォンタブレットなどでどうファンに試合を楽しんでもらえるか、新しい試みがたくさんある。

 

そのほかにも、「スポーツツーリズム」という言葉に代表されるようにスポーツは「する」ものとしても「みる」ものとしても「観光」と非常に相性が良く、スポーツ産業とかけ合わせたからこそ提供できるプランやパッケージが増えている。さらには、スポーツ産業と健康産業の組み合わせも注目すべきところだろう。

「スポーツ」と「健康」はそもそも近い位置にある産業だが、今後少子高齢化が見込まれる日本において「健康」の重要性は高まっており、その健康に対して身体面・精神面両方で支えることができるのが「スポーツ」や「スポーツ産業」といえるだろう。

 

このような、スポーツ領域とのコラボは今後もたくさん出てくると思う。ポイントは、スポーツ産業がさまざまな事業とシナジーを期待できるのが特徴である、ということ。「なぜスポーツ産業はさまざまな事業とシナジーが期待できるのか」という点は「スポーツマーケティング」という切り口となる。

 

スポーツマーケティングには、以下の2つの視点がある。

1.スポーツチームや団体がコンテンツホルダーとして行うマーケティング

2.一般企業がスポーツを活用して自社のマーケティングに活かす

両者に共通するのは、自チームあるいは自社のファンを増やす、あるいはエンゲージメントを高めるための活動である点だ。

 

例を挙げると、前者はWebやSNSなどでファンに対してチームや選手の魅力を発信し、ファンを増やしたり、より応援してもらえるようにしたり。後者でいえば、球場・スタジアムで頻繁に目にする企業の広告が典型的な例だ。スポーツが持つ価値を活用して自社やサービスへの認知度を高める、あるいは売上につなげていくことが目的である。自分が応援するチームをスポンサーしている企業に対してマイナスな感情を持つ人は少ないだろう。

 

・スポーツマーケティングの原材料①:スポーツは大人数かつ多様な人々を惹きつける

プロ野球を例にとると、1試合平均で2万人から3万人のファンを動員する、その集客力が大きな価値のひとつだ。年間で70試合もあるホームゲームでこれだけの人数を動員する「コンテンツ」は、スポーツの他のエンタメも含めて見当たらない。コンスタントにこれだけの集客力があるからこそ、スタジアムでの広告価値、あるいはメディアを通じての露出価値がある。
 
・スポーツマーケティングの原材料②:ファンの高いエンゲージメント

単に集客力があるだけでなく、ファンの熱量の高さもスポーツが持つ価値のひとつだ。要は、「広く浅く」ではなく「広く深く」である。たとえば、ホームゲームに何回も観戦しに行くだけでなく、アウェーの試合にもお金をかけて遠征したり、応援している選手のグッズをたくさん購入したり。「必需品」とは決して言えないスポーツという「商品」に対し、感情面での豊かさと引き換えに多くのお金を落としてくれるのがファンという存在である。1試合に対して、同時に数万人がスタジアムに集まり、かつスタジアム外にもテレビやインターネット中継を通して「リアルタイム」でファンが集まる、このようなエンゲージメントの高さがスポーツマーケティングを行う醍醐味のひとつといえる。

 

Bリーグのデジタルも活用したスポーツマーケティング

近年のスポーツマーケティングにおいて、やはり「Bリーグ」としての成功事例は注目されている。特にSNSを活用したファンとのコミュニケーションは群を抜いており、バスケットボールという迫力ある競技性・特徴も最大限に活かしながらコンテンツを届けている。SNS映えコンテンツを生みやすく、これがコアなファンからシェア・拡散され、新しいファンの認知・興味を獲得するという好循環を生んでいる。また、チームを超えた楽しみ方ができるのも特徴で、たとえばファンに月ごとのMVPを選択・回答してもらうなど、幅広いバスケットボールファンを巻き込んだ企画も展開。これは、Bリーグとして権益を統合し、映像などの素材をチームの枠を超えて活用できてこそ実現できるスポーツマーケティング戦略である。

 
 
このように、プロ野球球団やBリーグという、第4次元:業界・団体でのスポーツマーケティングの視点は、とても興味深い。「コンテンツ」に魅力があるから、ファンが付き、その後のマーケティングへと展開できるのであろう。仮にこの視点を第3次元:会社にも当てはめるとどうなるだろうか?見てみたい。
 
まずは、キラーコンテンツが必要であろう。それが商品なのか、キャラクターなのか、サービスなのか、いずれにしても、キラーコンテンツがあれば、プロ野球球団やBリーグのようなマーケティング展開が出来うるということだ。Bリーグも、発足前はアマチュアリーグであり、プロ化のためにBリーグではb1〜b3まで階級を設けた。そしてb1では、全員がプロレベルの選手を揃えるということで、プロ化を目指していったという経緯がある。Bリーグとしてもプロ化をするために、ルールを設けており、b1所属のチームは、アマチュア選手の登録は2人までしか許されていないが、b2はプロ選手が5人いれば、残りはアマチュア選手でも良いというルールになっている。
 
このように、厳しいプロ意識をコンテンツ側にも求めていき、成果がでなければプロの世界では生き残れないという風土を作り上げていくのだ。それゆえ、会社のキラーコンテンツが商品なのか、キャラクターなのか、サービスなのか、いずれにしても、そのコンテンツ自体を人格化(ペルソナ)させ、その人格をBリーグのようにb1~b3のように階級化させ、言動を厳選していくことで、ファンが付くのかもしれない。
 
例えば、飲食サービスだとしよう。サービスレベルがb1の場合は、複数のお客様の注文を聞きながら、水も継ぎ足し、笑顔も絶やさず、お会計にも回り、お客様とのウイットのきいたトークまでこなす。まさにプロレベルの接客をするような人だ。
 
このようにコンテンツをプロ化していき、ファンが付くほどのキラーコンテンツにしていくことで、経営者としては、スポーツマーケティングのような周辺ビジネスを拡大できるチャンスが到来するということだ。プロ化というのは、その道のスペシャリストであり、他の仕事には必ずしも生かせない場合もある。しかし、その道では誰にも負けないほどの突出したレベルにあるということだ。
 
会社での場合、このようなキラーコンテンツが1つ2つあれば、それが商品であれ、サービスであれ、キャラクターであれ、人格化(ペルソナ)していけば、自ずとプロレベルとはどういうものか?というのが見えてくる。見えてくれば、いかにファンが付くほどのレベルに育成できるかが、経営者の課題となるのだろう。このようなキラーコンテンツを育てていくというのは、今後のティール組織では必須になっていくのかもしれない。