第1次元:人間のDNAの転写を参考にする⑤

先に、スイッチのON,OFFについて

記載した。

 

「私の運動音痴は遺伝のせい」

「遺伝だからしょうがない」。

私たちは特に“うまくいかないこと”

があると遺伝のせいにしたくなる事

がある。しかし、「すべての人間の

遺伝子は99.5%が同じで、能力の

差は遺伝子のオンとオフが関係し

ている」と説明されたらいかがであ

ろうか? そうなのであれば、いち

早く遺伝子のスイッチを「オン」にし

たいであろう。

人間の細胞一つの中には32億個

の遺伝子情報が詰め込まれており、

実は、人間の遺伝子の98%は眠っ

ていて、潜在能力が引き出せない

状態になっている。その眠っている

遺伝子のスイッチをオンにすれば、

偉人になれるのだ。

 

 

遺伝子発現がいつどこで起こるかを

指示しているのは,特定の非コード

配列だ。この重要な役割を果たす配

列は「エンハンサー」と呼ばれ,遺伝

子スイッチの構成要素として,適切な

時期と場所で遺伝子をオンやオフに

する働きをする。以下こちらより抜粋。

 

DNAという材料から構成されるゲノム

には遺伝子として発現する部分、

つまりDNAからRNAへと転写され実際

に機能する部分はゲノム全体からすれ

ばごくわずかな領域しかない。しかし、

ゲノム上にはどの遺伝子が転写される

のかを制御している領域がある。これを

シスエレメントと呼ぶ。シスエレメントに

は遺伝子の発現に必須であるプロモー

ターと、発現の部位や強度を調整する

エンハンサーと呼ばれる領域に大別す

ることができる。

 

近年、組織特異的な遺伝子発現には

エンハンサーが大きく関与してしている

ことが分かってきた。スイッチのもう1つ

の構成要素である「転写因子」という

タンパク質は,DNAの中からこのエンハ

ンサーを見つけ出してそこに結合する。

細胞の核内で転写因子がエンハンサー

に結合すると,その遺伝子がオンにな

るかオフになるかが決まる。

 

例として、皮質脊髄路を作り出す遺伝子

Fezf2について見てみよう。

大脳皮質はその皮質層特異的な転写

因子が発現することが知られている。

中でもFezf2と呼ばれる転写因子は、

皮質脊髄路を構成する第5層ニューロン

に重要な遺伝子であると考えられている。

 

Fezf2近傍のDNA20万塩基対の配列を

マウスに入れると、Fezf2の発現をよく

再現しているマウスが生まれることが知

られていたので、筆者らは「この20万塩

基対のどこかにFezf2の発現を制御して

いる領域が含まれている!」と考えた。

その20万塩基対を調べると、哺乳類に

おいて特に保存度高い領域が4か所見

つかった。その領域を順番にE1~E4と

名付けた。

 

次に筆者らは、E4に結合する転写因子

をコンピューター予測と遺伝子発現デー

ターベースを用いて探索した。その結果、

Sox4とSox11という遺伝子が候補として

上がってきた。そこで大脳皮質でSox4と

Sox11が欠失するマウスを作製したとこ

ろ、Sox4とSox11が両方欠失させたとき

のみ皮質脊髄路が欠損することが分か

った。つまり、E4にはSox4かSox11の

どちらかが結合することによりFezf2の

発現が調節されていたことが分かった。

 

続いて彼らは他の生物のE4を調べて

みたところ、マウスからヒトにいたるま

でE4は保存されていたが、大脳皮質が

あまり発達していないカエルや、ゼブラ

フィッシュなどの魚類はE4配列を持って

いないことが分かった。また、皮質脊髄

路が形成されないFezf2が欠損したマウ

スに、ゼブラフィッシュのFezf2を代わり

に発現させると皮質脊髄路が作られる

ことが分かった。つまり、Fezf2の働き自

体が進化によって変わった訳では無く、

あくまでもE4という発現調節領域を獲得

したことが大脳皮質の進化において重

要なターニングポイントになったことが

示唆された。

 

生物の進化には遺伝子の種類の増

加以外にも、今回示したような遺伝子

発現調節領域であるシスエレメントの

進化も非常に重要な側面となる。

タンパク質になる遺伝子の種類自体

は、驚くべきことに線虫のような単純

な生物とヒトとで大きく違いはない。

しかしながら、ヒトのゲノムは線虫の

約30倍大きいことが挙げられる。これ

はヒトと線虫における大きな差だ。

この大きなゲノムには無数のシスエ

レメントが存在しており、このシスエ

レメントによる精密な遺伝子発現制御

が生物の複雑性に重要であるという

ことだ。

 

 

これを会社での事例に置き換えて見

てみたい。

DNAとは情報の数々であった。これら

の先頭には、ラベルや付箋紙などの

プロモーターやエンハンサーという

ものが引っ付いてDNAとなっている

のであろう。

そのプロモーターやエンハンサーに

どんな転写因子がやってきたら、

遺伝子がONになるというのだろうか。

 

私たちは大人になるにつれて、さま

ざまな知識を身につけるが、それは

ほとんど常識と呼ばれる範囲にとど

まるもので、それでは遺伝子は目覚

めない。スイッチをONには出来ない

のである。笑いや祈りや愛が遺伝子

のスイッチをオンにするのだ。

 

生物学者村上和雄先生は言う。

遺伝子スイッチをONにするには以下

のような行動を取ると良いと。

○笑いが糖尿病患者の血糖値の

上昇を抑制した
○笑いは副作用のない薬になる

かもしれない
○どこの国の神話にも笑いが描

かれている
○大ピンチのときにこそ笑いが

大切になる

○高い目標を持って,自分を追

い込む(遺伝子は強く必要とされ

ないと目覚めない) 

○失敗を恐れず強い気持ちで挑

戦する(守りの姿勢ではよい遺伝

子は眠ったまま。また,遺伝子は

危険な状態になると活性化する) 

○「できる」と思うこと(「できない」

と思えば遺伝子は眠ったまま) 

○ 「ありがたい」という感謝の気

持ちで試練に臨む(プラス思考が

遺伝子に影響する) 

○壁にぶつかったら思いっきり

環境を変えてみる(環境ストレスを

取り除く) 

○予想外の結果になった時,それ

を「面白い」発見や視点にする

○頭の中であれこれ考えるより,

まず行動に出る。

 

また、以下の行動は遺伝子スイッチ

をOFFにしてしまうので要注意。

×いたずらに安定を求める気持ち

×つらいことを避けようとする態度 

×現状維持の気持ち 

×勇気の欠如 

×本能的欲求の抑制 

×成長への意欲の欠如

 

 

村上和雄先生の見解を参考にする

と、会社における転写因子とは、

笑い、感謝、愛、プレッシャー、危機、

成長、勇気、挑戦、などが当てはま

るのではないか。

これらが、上手にDNAという情報に

引っ付き、転写因子となった際には、

遺伝子スイッチがONになる場合が

あるということなのだろう。つまり、

その情報の詳細までを自発的に

興味を持って調べ始めるということ

なのだろう。逆にスイッチがOFFに

なると、その情報に興味がなくなり、

自発的に調べようとも思わないと

いうことなのだ。

 

よって、スイッチが入り興味を持ち

始めるためのトリガーが転写因子で

あり、笑い、感謝、愛、プレッシャー、

危機、成長、勇気、挑戦、などを、

いかに上手に1つから複数を組み

合わせて引っ付けていくかがカギ

になるのであろう。

 

これらの転写因子は環境なので

あり、自分自身をこのような環境下

に置いているかどうかによって、

スイッチがONになり得るかどうかが

決まるのである。

例えば、法律という情報に相性の

良い転写因子は危機やプレッシャー

なのかもしれない。

他には、顧客情報に相性の良い

転写因子は、成長、挑戦なのかも

しれない。

もちろん、そうでない環境下もあり、

一概には言えないだろう。とにかく、

情報をインプットするには、環境が

カギになるのであり、その環境を、

マネジメントできれば、たくさんの

スイッチが入るということだ。

 

普通に情報を得ようとしても、決し

て興味は湧かない。自分自身の

スイッチを入れるには、環境を工夫

することが偉人になれる道という

ことだ。

そして、一般職員をマネジメントす

る際にも同じ事が言える。その人

の環境を上司がいかに工夫できる

かによって、凡人になるか偉人に

なるかの分かれ道というわけだ。

 

そして、人それぞれ、2万種類もの

スイッチがあるが、どのスイッチが

ONになって、どのスイッチがOFFに

なっているのかは、人それぞれで

違う。だからこそ、同じように”笑い”

という環境下に置いても、スイッチ

が入る人と、入らない人がいると

いうことだ。

 

参考までに、転写因子のイメージ

を下記に記す。

図は3つの転写因子を使って、

8種類の異なる細胞が生み出され

る様子を示している。

大きな丸は細胞を、小さな色付き

丸は転写因子を示す。3つの転写

因子がそれぞれ1つもしくは組み

合わせて発現することで、8種類

の異なる細胞を作ることができる。

 

我々はこうやって情報に転写因子

をつけて記憶していくのである。

この転写因子が上手く引っ付か

ないと、興味が湧かないし、記憶

もできないということだ。

 

 

いかがであろうか。

これがDNAの転写の仕組みで

あった。この仕組みは会社内で

大いに役立つ。この仕組みを使い

データベース化できれば、膨大な

記憶力にもなり、あらゆる情報が

頭の中に入っていくのである。

まさに偉人となれるのである。